追悼今村昌平監督・岡田真澄さん

ええじゃないか デジタルリマスター版 [DVD]

ええじゃないか デジタルリマスター版 [DVD]

学生の時二日間だがアルバイトで映画『ええじゃないか』のエキストラをした。東京の水元公園に作られた江戸時代の「両国橋」とか遊郭見世物小屋が集まる街を再現した巨大オープンセットに行った。撮影は民衆が”ええじゃないか”踊りをしながらパニックになるという映画のクライマックスシーン。エキストラは数百人いて、数日間行われたが、そこで僕は一日目が「乞食」役、二日目は「おかま」役だった。真冬のものすごい寒い日なのに、設定は「真夏」だったので寝巻きのようなごく薄着。しかも踊りまくって汗をかいているという役なので霧吹きで水をかけられブルブル震えていたことを思い出す。演出はもっぱら助監督が行い、僕は踊りの振付けをにわか仕込みで教わり演技らしきこともやった。でも実際には俳優陣の演技や準備に合わせて「待ち」が多かったと記憶している。特に有名な女優たちの「放尿シーン」では2時間くらい(遠くて見えず、何で待機なのかその間全く説明なし)待たされた。
一方、一緒に行った後輩は渡し舟の船頭役をやらされ、うまく漕げず、今村監督に「そこの船頭!何やっている!」と怒鳴られていた。彼としては生まれて初めて棒一本で舟を漕ぐという経験だったわけで、うまく操れるわけがなかったのだが。でも憧れの今村監督に怒鳴られて少しうれしそうだった。僕も監督に会えたし、俳優の皆様を見れたし、一介のエキストラとはいえ出演できたのはとても光栄でした。
ちなみに今村監督の師川島雄三監督は、僕が学生時代所属していた映画研究部の大先輩(もちろんとっくに亡くなっていたが、だから何だかとても身近な感じだったのだ。)で、今村監督は川島の代表作『幕末太陽伝』で助監督と共同脚本を務めていた。
幕末太陽傳 [VHS]

幕末太陽傳 [VHS]

(まだ観たことのない人は不幸だ)
この映画の脚本は本当に秀逸。もちろんこの作品が大傑作な理由のひとつだが、演技陣の名演の数々も見のがせない。その中のひとり、いかにもハーフ顔の番頭さんというシュールな役どころで出演した岡田真澄さんが今村監督と一日違いで亡くなられたことは何か因縁めいている気がしてならない。お二人のご冥福をお祈りします。
で、映画『ええじゃないか』だが何十回観ても自分の姿は見つけられなかったのだった。トホホ。