フランケンシュタインとクリスマス?いいよ〜!

フランケンシュタイン (ベスト・ヒット・コレクション 第9弾) 【初回生産限定】 [DVD]
今日はクリスマス・イブであります。
僕はクリスマスというと『フランケンシュタイン』を思い出してしまう。


何故か。
今を去ること20数年前、新入社員の頃の話なのだが、その会社は映画関係の会社だったので当然ハリウッドの映画会社と密に取引があった。国際部という部署が海外との連絡を担当していたわけだが、今頃の時期になるとハリウッドから夥しい数のクリスマスカードが届く。色とりどりで日本のものとはやはり違う風情の「本場もの」のカードがオフィスの壁を飾って、楽しい雰囲気を出していた。
だが、よくカードを見ると、
Merry Christmas
と書かれているのがほとんど無い!
たいていは「Happy Holiday」か「Season's Greetings」と書かれている。
そう、ハリウッドの映画会社のほとんどはユダヤ系だ。
ユダヤ人はキリスト教の祭りであるクリスマスを祝ったりしない。
だから「季節のご挨拶!」という文面なのだ。


そうだよね。
日本人はだいたい宗教オンチなのでガイジンならみなクリスマス祝うだろうと勘違いしてしまう。
この出来事で改めて世界の宗教とか習慣とかを意識したものです。


で、ちょうどその頃、メル・ブルックス監督の『ヤング・フランケンシュタイン』を観ていて
「そういえば怪物を作ったフランケンシュタイン博士はユダヤ人だったなあ(メル・ブルックスユダヤ系)」と気づいて、それをきっかけに連想ゲームのように「クリスマス=フランケンシュタイン」のイメージが出来上がってしまったのであります。
ヤング・フランケンシュタイン〈特別編〉 [DVD]


なんとも情けないが、僕はメアリー・シェリーの原作(正確には『フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』)を読んでからこの「フランケンシュタインの怪物」が大好きになって、結構関連する映画や本を漁ったもんです。原作は単なるホラーではなく実に哲学的な示唆が盛りだくさんで含まれたもので、哀しみと痛みを伴った、ダイナミックな冒険譚なのだ。


怪物に友人や妻を殺され、復讐に燃える博士は怪物を追ってヨーロッパ中を行き、北極まで追い詰める。ついに北極海の氷の上で二人は対峙し、互いの心情が話し合われる。怪物は自分の醜さを恨み、人間に失望したと、創造主である博士に告げる。
しかし対決の結果博士は氷の中に沈み、怪物も北極海の霧の中に静かに消えていくというラストである。


世界中のどこの国の何の宗教でも、死んだ人間を「切り刻んで組み合わせる」など許されることではない。非常におぞましい行為であることは間違いない。これを女性が書いたとは何とも…。

因みにユダヤ系もキリスト系も、ついでに言えば大体の宗教においては生命を創るのは「神」の業であるので、「何かに生命を与える」ということは大変な「背徳行為」に当たる。これも日本人が想像する以上に厳しい罪で、だからこそ博士には様々な罰が与えられるのだ。というようにいろいろ深読みができるんです。


さて、一番有名な映画はユニバーサル映画の『フランケンシュタイン』(1931)で、「醜く生まれた怪物の哀しみ」はよく表現されていた傑作だが、残念なことに原作のような大冒険はすべて省かれている。この映画の最大の功績は俳優ボリス・カーロフの怪物メークであろう。
すなわち、まっ平らな頭、継はぎの縫合跡、首に金属杭がある巨人で、フンガー!としかしゃべらず、ノタノタ歩くという姿である。やっぱりこれが長く世界中の人に愛された怪物ですね。


最近のエンタの神様に登場するスリムクラブ怪物フランチェンもそうですね。


だが、世界で最初に作られた『フランケンシュタイン』映画は発明王エジソンが作った映画(1910年)で、怪物の姿はもじゃもじゃの髪に、眼の周りなどに模様をつけた変な顔で、全く違うイメージだ。
このメークは歌舞伎の隈取とよく似ていると指摘されているのだ。
エジソンは当時は発明家というよりは実業家として活躍していた。
新渡戸稲造の『武士道』を愛読しており、日本にとても興味を持っていた。
この映画を作る直前に、渋沢栄一を代表とする日本の実業団が訪米しエジソン社にも訪問したことが分かっている。渋沢は帝国劇場の経営にも関わっており、歌舞伎にも造詣が深かった。エジソンに歌舞伎俳優の絵や写真を見せたのではないかという説がある。
そうであれば、世界最初のフランケンシュタインは歌舞伎の隈取を参考にしたとしても不思議でない。そういえばキッスのジーン・シモンズにも似ているような気がしますね。
Youtubeでこの映画を見ると、フィルムの逆回しというトリックを使っていて、
死体をつなぎ合わせるというよりは「生成」されるという感じでこれはこれで面白いですね。



その後、原作に比較的忠実な映画といえば、
コッポラ製作総指揮、ロバート・デ・ニーロが怪物を演じたケネス・ブラナー監督(博士役も兼任)の『フランケンシュタイン』(1994)というのもあったが、きわめつけは『真説フランケンシュタイン(1973)』というテレビのミニ・シリーズだろう。3時間半くらいある超大作で、ちゃんと北極のくだりまであった。しかしこれは日本で放送された時はズタズタに切られてしまって、ラストもナレーションでごまかされたとんでもないものだった。(博士は『ロミオとジュリエット』のレナード・ホワイティング!)しかもこの作品はいまだにちゃんとビデオソフト化されていない。もったいないですねえ。


というわけで今日僕はジングルベルを歌いながらどれかのフランケンシュタイン映画を見ることにします。