月給制のスーパーギタリスト

ローリングストーンズがブライアン・ジョーンズを辞めさせた時、後釜のギタリストとして最初白羽の矢を当てたのはロイ・ブキャナンだった。あっさりその誘いを断ってしまった彼は今日「世界最高の無名ギタリスト」として知られているが、その後も世界中のギタリストたちが尊敬する、実力の持ち主だった。
ロイ・ブキャナン
(ロイ・ブキャナンの最高傑作。『メシアが再び』はギターインストの名曲中の名曲!)
因みにジェフ・べックが名曲『哀しみの恋人達』を「ロイ・ブキャナンに捧げる」としているのは有名な話。

カントリーやブルース、ジャズなど何でも器用にこなすが、名声や金銭のために自分のスタイルを変えようとしない生き方は、不器用だったと言わざるを得ない。
晩年もマイペースに自分の好きな音楽をやっていたが、酔っぱらってトラ箱に入れられ、そのまま首吊り自殺をしてしまった。
で、結局ストーンズジョン・メイオールのバンドにいたミック・テイラーを入れた。ミック・テイラーもブルースにルーツを持つタイプで、やはりオールマイティタイプのギタリストだった。熱烈なクラプトン信者だったテイラーは素人(弱冠17歳)の時、ジョン・メイオールバンドのライブ会場でクラプトンが欠席した時、ギターを持って飛び入りし、クラプトン完全コピーをして会場の皆を驚かせた。
結局クラプトン脱退後のメイオール・バンドで、クラプトンの後釜ギタリストに採用されたという伝説の持ち主だ。

山羊の頭のスープ(でかジャケ)
『山羊の頭のスープ』の中に収録されている『悲しみのアンジー』のアコースティックは彼だが、あのような繊細なプレイも得意でもあった。今だにテイラー在籍時のストーンズが人気があるのはひとえに彼のギターによってストーンズスタイルに厚みと幅が出たからだと思う。実はミック・ジャガーも彼が居た時が音楽的にベストだったと言っているほどだ。しかし、そのテイラーも音楽的な意見の相違から4年くらいで突然脱退してしまった。さてその後のギタリスト選びである。何せ世紀のバンド、「ローリングストーンズのギタリスト」である。だから大騒ぎになった。この時のことはロック史上「グレイト・ギタリスト・ハント」と呼ばれている。で、
アルバム『ブラック・アンド・ブルー』
ブラック・アンド・ブルー(でかジャケ)
をレコーディングする時、そこに呼ばれたギタリスト達の豪華さといったら。

ブロウ・バイ・ブロウ
1、ジェフ・ベック
大物過ぎ!べック様は「ただジャムっただけで誘われたわけでもないし、ストーンズに入るつもりもなかった」などとおっしゃっていた。

フランプトン・カムズ・アライヴ!
2.ピーター・フランプトン
もし加入していたら大ヒット作「カムズ・ア・ライブ!」はありえなかった。元祖男前ギタリスト。

ライヴ・イン・アイルランド(紙ジャケット仕様)【2012年1月23日・再プレス盤】
3.ロリー・ギャラガ
この人も大物!スライドが抜群にうまかった。ボロボロのストラトキャスターがかっこよかった!(故人)


4.ハーヴェイ・マンデル
意外なことにジョン・メイオールアメリカに移住し、70年にアメリカ人とバンドを結成した。その時のギタリスト。 つまり、クラプトン、ミック・テイラーと同門のブルースギタリスト。
5.ウェイン・パーキンス
スワンプやレゲエなどアメリカ南部っぽいブルースが得意で、この人もスライドギターの名手。


ウー・ラ・ラ
6.そしてフェイセズロン・ウッド(ジェフ・べックバンドではベースを弾いていた)
である。


結局べックの推薦もあってロン・ウッドが選ばれた。彼が加入してからストーンズはしばらくの間低迷してしまうが、今ではオリジナルメンバーと同じくらい溶け込んでいる。そりぁそうだ。彼が入ってからもう30年たっていたのだね。98年にストーンズのライブを観た時も彼のバッキングは相当計算されたものだとわかった。キースの音を殺さないようにとかなり気を使っているのだ。これまでの候補者をみると、皆ブルースにルーツを持っていて、(深くはないが)オールマイティなテクニックを持っているという共通点がある。これはキースとバランスを取るための必須条件なのだろう。それは性格的にもおとなしくて出しゃばらない人。だからべック在籍のストーンズというのも観たかったけれど、べックやフランプトンなどきっと半年ももたなかったろうと思う。
さて、この時の『ブラック・アンド・ブルー』はオーディションを兼ねてレコーディングされたわけだが、4.5.6.のギターはそのまま発表されている。なるほどこれならギャラも安くてすみそうだし。ちなみにロン・ウッドは93年まで20年ちかく月給制だったそうで。もちろんたんまり貰ってたんだろうけれど、レコーディングもライブもない時も給料もらっていたのだろうか?残業代とかボーナスとか毎年のベースアップとかあったのだろうか?ジェフ・べックが入っていてもそうだったのかなあ。何だかなあ…。