シェーンとスター・ウォーズの関係?

シェーン [DVD] FRT-094

昨日の朝日新聞で、「53年映画著作権消滅」という見出しで、『シェーン』などの名作映画は、最高裁が「公表後50年を通過して著作権は消滅している」と判断し、著作権を持つと主張する原告側の訴えを退けたというニュースが大きく掲載されていた。いわゆる『シェーン』訴訟。
これによってこれらの作品はパブリック・ドメイン(公の財産)と認められて、他者でも素材さえあれば販売できるということになった。
上のDVDのような格安ソフトも晴れておおっぴらに売れるわけだ。

僕はかつてはこの原告側の立場にいたのでとても複雑な気分です。
格安なのは消費者にとってはうれしい限りだが、格安なのは理由がある。
まず素材は、ひどいのになるとさんざん劇場でかけたフィルムを手に入れてそれをビデオ化したもの(傷・ゴミ満載!)とか、アメリカのケーブルテレビで放送されたものをダビングしてたりする。
字幕製作だって、おそらく学生などのアルバイトに翻訳させていて出るタイミングもいい加減なのも多く、観ていて????というのもある。


正規版は、その映画を作った本家なわけだから、保管しているオリジナルフィルムからテレシネ(フィルムから直接ビデオ化する技術)もできるし、デジタルマスターだって可能だ。日本ではちゃんとした映画翻訳家に依頼しているので、字幕も名作の名に恥じないものが出来上がる。
このように相当な差が出るんです。だから高いと言われればその通りですが。
でもレンタルビデオで一回観て終わりというのでなく、コレクターズアイテムにするならやはり後者ですね。


今後一気に格安版がゾロゾロ出る可能性も高くなったが、クオリティはともかくたくさん観たい!という人には格安版をお薦めといったところですかね。


さて、この『シェーン』だが、やはり傑作である。僕は10回くらい観ている。
西部劇には興味がない!という人も一度は観るべき作品なので、まだ観ていない人はだまされたと思ってぜひ観て欲しい。
主人公シェーンの正義と男気は日本の侍精神に通ずるものがあります。ちなみにアラン・ラッドの早撃ちは見もので、当時の俳優中最速と言われてました。
また、敵役のジャック・パランスがこれまた素晴らしい演技でした。そして極めつけは子役!
ラストで泣かない奴は鬼!です。


と言いつつこの映画で観られるいくつかの「粗」をご紹介します。
主役のアラン・ラッドは背が低いことで有名な俳優で、他の俳優と一緒に並ぶとそれがどうしても目立ってしまう。だからこの映画、よく見ると不自然な構図が多い。特にジャック・パランスと対決する酒場。カメラが不必要にローアングルだったりハイアングルだったりしています。カメラマン相当苦労してますね。

それとこのガンアクションシーンには編集のミスがあって、いわゆるアクションつなぎ」が出来ていないところがある(倒れかけた人間が次のカットでまた倒れかけるところがある)。


この映画で一番「伝説」としてよく知られているのは…
冒頭、鹿が水を飲んでいて、遠くから馬に乗ったシェーンがやって来るシーン。
あの有名なテーマ曲『遥かなる山の呼び声』が流れ、カメラが大平原を写したところで、左上に何か光るものが移動して見える。
「UFOかっ!」
いや、よく見るとバスです。
バスが土煙をあげて走っている!
ありえん!
誰も気が付かなかったのか?


あとはネタバレになるかもしれないが、
ラスト去っていく主人公シェーンが、馬で山の上の方に行くと一瞬ガクッとするところがある。

これは、実はシェーンは対決の時撃たれていて、それを誰にも知られずに死に場所に向かったのではないか?という説があったのだ。
確かに、シェーンの行き先には墓の十字架があって…。
これははっきりと見せていないので解釈の問題かもしれませんが。


なお、俳優アラン・ラッドはこの映画以外はあまりパッとしなかった。アルコール依存症になって最後は自殺した。
しかし息子アラン・ラッド・Jrは映画プロデューサーとして大成してFOXやMGMの社長にまで上りつめた。
彼がFOXの製作部長だった当時、ジョージ・ルーカスという若い監督が持ちこんだ企画があった。ユニバーサルなど他社にみな「古臭い・売れない」と断わられものだったが、JrがOKの判を押した。それが『スター・ウォーズ』である。だからハリウッドでは今や息子の方が有名である。今年の東京国際映画祭の審査委員長でしたね。


スター・ウォーズ・ヴォールト (講談社トレジャーズ)
当時まだ駆け出しの監督ジョージ・ルーカスはFOXが申し出た破格の監督料金を断り安くした。その代わりに商品化権料をもらうという条件に判を押してもらった。
FOXは安上がりだと大喜びで契約したが、もう遅かった。『スター・ウォーズ』グッズの売上げは映画配給収入を遥かに超えた。ルーカスが億万長者になっていくのをFOXは指をくわえて見ていたに違いない。これ以降、映画会社各社は「商品化権」を重くみるようになった。Jrはこれを教訓に『エイリアン』などを作って大当てした。

というようにいつの間にかシェーンの版権問題が『スター・ウォーズ』の商品化権の問題になってしまったが。
とにかくこのように観た人も観てない人も、見どころ満載の『シェーン』ぜひご覧くださいね。