ハーフマニアはコラムも力いっぱいですよ!

ハーフマニア―日本の有名人の混血をカリカチュアで大紹介!』ノーカット版、今回はハーフ本人でなく、ハーフにまつわる話として「コラム」に書いたものを紹介します。

中華人民共和国中華民国

『ハーフマニア』で王貞治について書いていた時期のことです。「中国と台湾が合同で尖閣諸島の接続海域に侵入した」というニュースが流れたのですが、それをたまたま一緒に聞いていた僕の若い同僚が「中国と台湾って違う国!?」と言っていたのに僕はびっくりしました。今の若者たちは中国と台湾について歴史で教わってないのでしょうか?これを聞いて「台湾は中華人民共和国の一部と思っている日本人は実は多いのではないか?」とちょっと僕は危惧したのです。
編集のハマザキカク氏もちょうど『ニセチャイナ』という本を企画中ということで、この二つの中国について説明が必要だとなり、このコラムを書くことになりました。
中国(中華人民共和国)と台湾(中華民国)は違う国です。しかし、現在日本で売られている世界地図では台湾には「中華民国」の国名の表示が明解にされてなく、ただ「台湾」となっています。いろんな事情があってそうなっているのです。そう至ったのにはかつての日本の植民地政策がかなりの割合で影響しているといえます。はぜひ今の日本人特に若い人達に知ってほしいと思い書きました↓


コラム 二つの中国
中華人民共和国中華民国 王貞治=台湾人説について)
辛亥革命後の中国の状況は非常に複雑だ。1912 年、南京に中華民国が打ち立てられ、孫文が臨時大総統に一度は就任したものの、清朝の再有力者で総理大臣だった袁世凱が、清朝宣統帝の退位と引き換えに中華民国臨時大総統に就任した。しかし袁と対立する軍閥系の臨時政府が各地に林立することになる。袁は独裁を進め帝位を望んだため国民から強い反感を買い反乱が起こった。袁はその鎮圧に当たるが、その最中に病死し袁世凱政権は崩壊した。その後は複数の軍閥による政権が目まぐるしく変わった。孫文の跡を継いだ蒋介石が各地の政府を統一し1928年に南京に別の中華民国国民政府を樹立させる。だが、同じ頃日本の侵略も本格化し東北部には満州国が建国された。満州以南は主に蒋介石率いる国民党と、毛沢東率いる共産党の二大勢力が存在したが、共通の敵・日本と戦うために一時手を組んだ(第二次国共合作 1936年)、そして1937年から本格的に日中戦争に突入した。1945年、終戦により日本が中国大陸から退却すると、この二大勢力は再び対立を深めた。中国大陸で両者は覇権を競い激しい内戦状態になる。やがて毛沢東共産党が勢力を広げていき大陸を制覇した。敗れた蒋介石一派は大陸から逃れて台湾に「中華民国を移した。そして大陸に残った共産党は1949年に中華人民共和国を成立させた。以来、世界に二つの中国が存在することになるのだ。


王貞治)一家は中華人民共和国成立以前に大陸に在った中華民国の国籍を取得したのだった。戦後すぐは中華人民共和国は国際社会から認められておらず、アメリカなど資本主義世界は中華民国の方を正式に中国と認め、中華民国が国連の設立時から加盟している。アメリカに追随していた日本も当然中華民国と国交を結んでいる。日本で暮らす華僑たちも、この共産党・大陸系と国民党・台湾系の二手に分かれて対立していた。なお、大陸生まれの(王貞治の父)仕福は、後に華僑の同胞に勧められるままに中華人民共和国の国籍を持つことになったが、妻・登美と貞治ら4人の子らは中華民国の国籍である。仕福は、家族は日本と国交のある中華民国の方が日本で暮らすには都合がよいだろうと考えたらしい。巨人で活躍し日本のヒーローになった貞治だが、中華民国からも国民的ヒーローにされた。貞治は1965年に台湾に招待され大歓迎を受けている。蒋介石総統・宋美麗夫人とも会見し、その模様は日台で大ニュースになった。それは中華人民共和国側を牽制する、いわば政治的なデモンストレーションであり、貞治はそれに利用されたと言える。「王貞治=台湾人」のイメージはこうして作られたものであり、王自身も父・仕福も台湾には縁はないが、王が中華民国籍を現在も保持しているのはこうした事情があったのである。だが、戦後数年を経て中華人民共和国が国力をつけてくると国際社会も無視できなくなった。1972年、米国・ニクソン大統領が電撃的に訪中し、中華人民共和国との国交回復を宣言。同年9月には田中角栄首相も訪中し、日中国交回復を実現した。また同時に中華人民共和国が国連に加盟、これは国際社会が中華人民共和国を正式に認めたことになり、対立する中華民国は国連を脱退(実際は除名)、日米からは「もうひとつの中国・中華民国(現在は台湾と呼称することが多い)扱い」となり国交が断絶されて現在に至っている。だが、文化・経済では日台は今なお非常に緊密な関係を保っている。また、台湾では外省人(主に戦後国民党に従って中国大陸から来た人)と本省人(もともと台湾島出身)と区別することがあるのだが、本書に登場する金城武蓮舫一青窈余貴美子らの親は台湾生まれの本省人か、または台湾に渡って暮らした日本人であり、貞治のように「父は大陸生まれの中国人で台湾とは所縁の無い人」でありながら「中華民国籍」を持っている人とは(時代が違うこともあり)かなり事情が異なるのである。



以上、十数年に及ぶ清国崩壊後から中華民国建国・国民党政府設立などまでかなりシンプルに纏めてしまったし、逆に纏まりきれない文章なので言葉足らずで分かりにくいのはどうかご勘弁ください。中国本土に林立した複数の中国についてはおそらく『ニセチャイナ』が最も詳しいでしょう。ご興味ある方はぜひ↓

とういうわけで『ハーフマニア』には台湾(中華民国)に出自を持つ人として、王貞治の他、余貴美子蓮舫渡辺直美金城武一青窈、ケイン・コスギを紹介しています。いずれの方も両親の出会いは劇的で、ハーフの子たちは両親からの慈愛に満ちた暮らしをしていました。しかし、「台湾」であるがゆえの辛いこともあったのは事実のようです。
『ハーフマニア』は、単にハーフたちのプロフィールだけを紹介しているわけでなく、ハーフ誕生の要因として歴史と、現在の国際情勢・結婚や出生など社会情勢についてのコラムもあるのです。

余談ですが台湾出身で日本でおなじみなタレントや歌手としては
ジュディ・オング欧陽菲菲テレサ・テンなどがいて、それぞれ紅白出場やレコ大、有線大賞受賞など大活躍しています。テレサ・テンの父は大陸出身の国民党の兵士で、蒋介石に従って台湾島に渡った人でした。

王貞治についてはこの↓本が本当に大変な参考になりました。著者の熱意には頭が下がります。王貞治に思いいれのある僕らの世代はもちろん、少年少女にもぜひ読んでもらいたい感動ドキュメンタリーです。
百年目の帰郷―王貞治と父・仕福 (小学館文庫)


最後に台湾については渡辺直美のこの本が意外と面白くて特に食べ物が美味そうで美味そうでタマラナイです。行きたいなあ台湾!

渡辺直美のたら福まん腹 台湾 ワタシ、地元ダカラ、穴場、知ッテルヨ!

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