シド・バレットが笑う…不気味に。

シド・バレットが死んだ。ピンク・フロイドを創り初期の曲はほとんど彼が手がけていた。天才の呼び名も高かった才人だったが、LSDのやり過ぎなどで精神を病んでしまい、あるコンサートではまったく演奏せず、ただ呆然と立っていたという事件もあった。そんなこんなで早い時期に離脱してしまった。ソロになってから何枚か傑作も発表しているが、残念ながらもう遠い過去の人となっていた。むしろよく今まで御存命でしたといった感もある。
帽子が笑う・・・不気味に (紙ジャケット仕様)


ところでピンク・フロイドというと日本ではプログレ、サイケの代表のように思われていて、マニア向けのバンドとして今ひとつ流行ってない気がするが欧米ではかなりポピュラーなバンドだ。「辞書に載っている」といえばその評価の高さが分かるだろう。因みにツェッペリンやクリームは載ってない。同じプログレでもイエスやクリムゾンも載ってない。(僕が10年くらい前にあちらの英英辞典を調べた時の話ですが今はみんな載ってるのかな?)
これは、フロイドが詩の面で英米に大きな影響を与えていることがひとつの理由かもしれない。また、イエスやクリムゾンと違ってあまり演奏技巧に走ることなく、ブルースをベースにした曲想が割と親しまれていることもある。
文明批評や社会問題をテーマにした哲学的な詩+ブルースという不思議な組み合わせと、緻密なスタジオワークで制作されたコンセプトアルバムはどれも完成度が高く、特に『狂気』はギネスに載るほどの超ロングセラー(ビルボートランクイン741週だそうだ!)だ。
狂気
(ベストセラーにはやはりそれなりの理由がある。『マネー』は今でも日本のニュース番組などで、例えば村上ファンドなどお金が飛び交うイメージ映像にBGMとして使われている。ちょっと情けないんですけど…)


またデビュー時代から取り組んでいるライトショーやコンセプトとリンクしたセットなどの大掛かりなステージングは。まさにワグナーのオペラに匹敵する一大ショーとして、多くの観客を魅了している。コンサートというよりお祭りのような感覚なんですね。
ピンク・フロイド - ライブ・アット・ポンペイ - ディレクターズ・カット [DVD]


とにかく日本人が考えている以上のメガバンドなのだ! だったらもっと日本に来て欲しいものですがとにかくアルバムは何年に1枚というペースで忘れられがちだし、ステージに金かかり過ぎでチケット高くなるだろうし、観客が来るかわからないし。まあプロモーターも大変なんだろう。
話は戻るがこのバンドの方針というか特徴というか全体のコンセプトを最初に築いたのがシド・バレットだった。だが彼はこれらの成功を享受することなくこの世を去ってしまった…。
彼は病院に入退院を繰り返し、退院してからも自宅の地下室にこもって絵を書きながら瞑想にふけていたという。死因は不明らしいが、ともあれ御冥福を祈ります。伝記映画作れるかな。(←しつこい)

ところでフロイドの初期のアルバムはアビーロードスタジオで作られた。そう、あのビートルズと同じ時期に隣り合わせで録音されたものもある。因みにスタジオのエンジニアだったアラン・パーソンズは両方のレコーディングに関わり、両バンドのプロデューステクニックの恩恵を受けた人である。繊細かつダイナミックなアルバム作りはこの時の経験による。そういえばアラン・パーソンズもアルバム出さないなあ…。
アイ・イン・ザ・スカイ
(このアルバムに収録された『オールド・アンド・ワイズ』は本当に名曲!クラシックファンにもお勧めです)
http://d.hatena.ne.jp/yunioshi/20060624