楽しくて悲しい時歌おう。

小学生の時、音楽で明るい楽しい感じの曲は長調(メジャー)、暗く悲しい感じが短調(マイナー)だと教わり、先生がピアノでわざと短調の曲を長調に、長調短調に弾き、皆を楽しませてくれた。
もちろん複雑な調を持つ曲もゴマンとあるので何でも単純に長調短調と割り切ることはできない。でも、なぜ長調または短調になるのか(調を生む仕組み)が分かると、けっこう面白くて、改めていろいろ曲を聴くと思わぬ発見があったりする。

若い頃、音楽友だちと飲む席でこういう遊びをよくやりました。すなわち、短調の曲を長調に、長調短調にその場でアドリブで変えて歌うのだ。
(予め楽譜などに書き直したものを歌うのは割と簡単なので反則です)
これがめっぽう面白い!
課題曲が、単純で、誰もが知っていて、歌詞が明解なものほど面白い!
例えば…『たのしいひなまつり』。「明かりをつけましょボンボリに〜」ってやつ。
この曲って「たのしい」って題名にあるくせに短調なんで、ちょっと悲しい。
では明るく長調にして歌いましょうよ。

あ、そこのあなた、歌い方は明るいんだけど、まだ短調のままですよ!
あ、こっちのあなた、よくできました!都はるみの歌みたいですが。

で今度は逆。
明るい曲を短調にして歌います。課題曲は『サザエさん』のオープニング主題歌!
「お魚くわえたドラネコを〜」ですね。

ああ、またそこのあなた、歌い方が低く暗いだけで、長調のままですね…。
ワハハハ、できましたね。でもやっぱり演歌みたいになってしまうんですねえ。

これが達人になると超難解な課題をこなせるようになる。
長調短調が小節ごとに交互に出て来るような曲。
雪の降る街を
これは大変です。まず一発で歌える人は相当音楽をやっている人です。

さて、この『雪の降る街を』、「辛い思い出」や「哀しみ」や「空しさ」を雪が包んでくれたりほぐしてくれて幸せになるという歌詞で、雪の暗さ辛さとともに雪の美しさや春のありがたさを表現している。まさに長調短調がふらふらすることで歌詞の意味を見事に伝えている。そこがまあ名曲たる所以。

クラシックの名曲にも。
例えばマーラーの『亡き児をしのぶ歌』という歌曲(第1曲)はまさにそれで、この曲はいったい長調なのか短調なのか最初聴いた時は判断ができず唖然とした。しかも歌詞も分からないのに何だか胸が詰まって感動してしまった。後で曲の内容を知って驚いた。曲名通り死んだ子のことを偲んで歌っていたのだと信じていたのだが、「生まれた子があまりに愛おしくて、その子が死んだ時の哀しみを想像して歌った」ものなのだそうだ。ああなんて複雑な親心!だからこういう曲になるんですね。
マーラー : 歌曲集 「さすらう若人の歌」
フィッシャー=ディースカウ版が最高。


ビートルズには
『恋に落ちたら』という曲があって、これはマーラーほど複雑じゃないけれど長調短調をフラフラ行き来する。歌詞も非常にひねくれていて、実は「女」の一人称で、惚れた男に向かって「あんたがあたしと恋に落ちたらあの女は傷つくでしょうねえ」みたいなことをしかもどこかおそるおそる言ってる。要するに男が女になり替わって複雑な女心を歌っているという、ビートルズでは珍しい一曲。日本のムード歌謡みたいだなあ。
A Hard Day's Night ? ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!


そして邦楽でいえば、やっぱりユーミンになってしまうが、
http://d.hatena.ne.jp/yunioshi/20060806
でも書いた、『朝日の中で微笑んで』は本当に名曲。
からしてもうフラフラ。サビがこれまた凄い長調←→短調の見事さ。この素晴らしさはもっと世界にアピールすべきでしょう。歌詞もやっぱり「うたかた」「幻」「夢」「形のない」というように愛の「はかなさ」を表わし、朝日の光の中に解けてしまいそうなふわふわしたイメージをきれいに伝えている。『雪の降る街を』みたいなわざとらしさが全くないのが、う〜ん天才…。
14番目の月



長調←→短調の例はまだまだまだありますね。
これも皆様募集します。よろしくお願いします!