ドクター中松もびっくりのミュージシャン

ちょっと前になりますが3月9日にボストンのリードボーカルのブラッド・デルプが亡くなった。
朝日新聞の死亡欄に掲載された。そんなに知名度がある人だったか…?って思いましたけど)
実は僕自身ボストンはデビュー以来の大ファンだしすべてのアルバムを持っている。しかしボストン=トム・ショルツのイメージが強すぎて、ボストンのメンバーの名前といえばこの人ぐらいしか覚えていない。もっともボストンは20年間に5枚くらいしかアルバム出していないし、メンバーははっきり言って「雇われ人」だ。だからよほどのファンでない限り、メンバーの名前を言える人はいないんじゃないでしょうか?

ボストンというバンドを知らない人のために念のためこのバンドについていえば、トム・シュルツという人がほとんど一人でやっている個人プロジェクトといっても過言ではないのでは。
シュルツは理数系大学の世界最高峰といえるM.I.T.(武蔵工業大学)を出ており、かなり高度な音響技術や科学的知識を持っている。自宅に自分が作った機材を満載したスタジオがあり、ボストンの曲の作詞・作曲・アレンジはもちろん、ボーカル以外はほとんど全部のパートをシュルツ一人が演奏して録音してしまい、レコーディングエンジニアとプロデュースまで行っている。従ってボストンのメンバーは「ライブをやるためだけに」集められたプロ集団である(ライブはまた、CDの音を忠実に再現する高度な演奏と音響テクニックでも有名)。


とはいうもののやはりシュルツの力が絶大すぎるくらい大きく、アルバムがあまり出ないのは完全主義者のシュルツがスタジオにたった一人で何年もかけて作り込んでいるからというもっぱらの噂だ。
何でもやってしまうマルチミュージシャンは多くいるが彼は天才とか秀才とかに近い人物らしく、オタクに近いのだろうか、楽器や機材に関して特許もたくさん持っているというから、ドクター中松もびっくりだ。


肝心な音楽といえば、アコースティックギターとハードで野太いレスポール系のギターが見事に融合し、かなり難解なコード進行や変拍子も織り込んだ曲が多く、それでいて非常に聞きやすいポップスである。
(エイジアに近いコンセプトかもしれない)

ボストンの曲で僕が一番好きなのは2枚目のアルバム『ドント・ルック・バック』の『A Man I'll Never Be』。
ピアノと同時にブラッド・デルプの艶やかなボーカルで始まるバラードで、そこにギターやベースがだんだん絡んできて盛り上げていく。ラストはなんとパイプオルガン風のオルガン(シンセかどうかは不明)が登場し、感動的に締めくくる。これぞアメリカンプログレハードの代表曲!だと思う。まだ聴いたことのない人にお奨めします!


このアルバムは全米1位になった歴史的1枚。絶対損しませんぞ。それにしても何もM.I.T.出てミュージシャンにならなくてもよいのに…。
ドント・ルック・バック(紙ジャケット仕様)【2012年1月23日・再プレス盤】


※「M.I.T.」はマサチューセッツ工科大学の間違いでした。お詫びして訂正します。