奇跡の再結成とは死なないからできること。

最近クリームのことばっかり考えてる。若き日のクリームだ。
http://d.hatena.ne.jp/yunioshi/20060523
に書いたがクリームがどうして結成そのものが奇跡かというと、ベースのジャック・ブルースとドラムのジンジャー・ベイカーは前に同じバンドにいて、実は2人は犬猿の仲だった。
グラハム・ボンドのバンドに在籍中のこと。ライブ演奏のまっ最中にジンジャーは「へたくそっ!」とスティックをジャックに投げつけ、それに激怒したジャックがベースをドラムに投げつけ、その後は取っ組み合いの殴り合い。他のメンバーがあっけにとられる中、もちろんライブは中止という、伝説の事件があったという。(うわ〜見てみたかった!)
その後バンドは解散、ジンジャーは天才ギタリスト、クラプトンとバンドを組みたがり、話は盛り上がる。で、「ベースは誰にする?」という段で、クラプトンは当然その時世界で最も優れたベーシストだったジャックを推薦した。ジンジャーは仰天した。「あんな奴と組めって?」。実はジャックからもクラプトンにオファーがあったのだが、その頃のクラプトンはジンジャーとジャックが犬猿の仲であることはあまり知らなかったらしい。むしろ同じバンドにいたのだからうまく行けるだろうぐらいの気持ちだった。ジンジャーはさんざ悩んだ末、ジャックの家に行き「休戦」を申し出る。どうしてもクラプトンと組みたかったのだ。最初渋ったジャックも折れてついに3人の至高のバンドが出来上がる。(この辺泣かせる。男だね!)
フレッシュ・クリーム
こうしてようやくクリームは始動し、リハーサルから最高の演奏が行われ成功するのを3人は確信した。かつての仲間たちもこの組み合わせには仰天したらしい。凄腕マネージャーや、敏腕プロデューサの後押しもあってレコーディング、ライブを重ね、初期から名声を高めていくのだが、次第にやはり犬猿の仲の2人の会話が時々もつれ、激しい口論になることもしばしば起こった。間を取り持つのはいつもクラプトンだったが、激しい気性の2人にはとてもついて行けない。泣かされることも多かったという。だがそんな事情とは裏腹にバンドは次第に方向性を定め、完成度の高いレコードの発売、拍手喝采英米欧のツアーなどクリームは大成功を納めていく。
(本当に分からないものだ。「仲良きことは美しきかな」と武者小路実篤先生が色紙によく書いていたが、かえってこんな仲の悪い奴らが芸術品を生み出すこともあるんだね。だから奇跡なのかも。ジンジャーは後のインタビューで演奏中に気を失い誰かが自分に乗り移って弾かされているような感覚に何度も陥ったと言っている)
とはいえ、バンドの後期はマネージャーのきついスケジューリングへの反発も手伝い、3人は3つ巴の喧嘩状態でボロボロになった。ツアーに行っても3人は別々のホテルに泊まり、ライブの数分前に顔を合わせそのままリハーサルもなしで本番ということもあったらしい。だがそのライブがまた最高だったりしたそうだ。彼らの本分が「アドリブの攻め合い」だから良かったのかもしれないが。こうして実質3年くらいでクリームは解散した。
こういう事情を知っているからこそクリームの今回の再結成が本当に奇跡だと思うのだ。
グッバイ・クリーム
クリーム後ジンジャーはクラプトンの後を追い、これまたスーパーグループを結成したがこれも短命に終わってる。
スーパー・ジャイアンツ・ブラインド・フェイス
(スーパージャイアンツってアルバム名、カッコ悪っ!だがこれまた名盤!)
クラプトンはその後、もっとボロボロの人生を送るはめになるのだが、立ち直った後の活躍はご承知のとおり。
ジャックは仲良しのミュージシャンたちとアルバムを作ったりしていたがはっきりいってクラプトンほどの活躍はしていない。ところが90年代に入って年取ってまろやかになったのだろうか。ロックの殿堂入りコンサートで3人は一夜限りの再結成コンサートをし世界をアッといわせた。日本では残念ながら放送されなかったので一部のファンでしか見られなかったが、(内緒だが僕は某所で海賊版ビデオを入手して今も家宝もんで大事にしている)これはかなりマジで感動した。同じ日になんとCCRとドアーズも再結成ライブをしていたが明らかに格が違っていた。クリームを紹介するためにステージに上がったZZトップが、神様クリームに対して「絶対手を抜いたり、ミスしてもごまかすなよ。俺たちはクリームの曲のすみずみまで知ってんだからな!」とイキなエールを送っていたのが印象的だった。(ZZトップかわいい!)
それどころか94年には、ジンジャーとジャックはクラプトン様抜きでかわりにゲイリー・ムーア君を入れて3人バンドを結成してしまっている。おい!犬猿の仲じゃなかったのかい!で昨年のクリーム再結成だ。インタビューによるとクラプトン様の呼びかけだそうで。「他のバンドだったら40年前のメンバーは集まらない。何故なら必ずどのバンドも死んじゃった奴がいるから。」のようなことおしゃっていた。なるほど。確かに。涙。なので健康が悪化しないうちにどうかクリーム日本公演実現してください。
最後になぜ仲が悪かったかというとジンジャーがアイルランド人、ジャックがスコットランド人、クラプトンがイングランド人だからという説がある。日本人にはあまりピンと来ないが、英国は連合王国でいまだに対抗意識がある(サッカーの代表がイギリス代表でなくいまだに分かれているのが分かりやすいかな)そうだ。